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5. ネットワークの構成

5.1 基本構成

ここではこの文書が扱う LAN の構成を説明します。次に 10 BASE-T Ethernetに必要

なハードウェアの説明をします。LAN を使うことによりモデムよりもずっと速く、複

数のコンピュータを同時につなぐことができます。この文書で例として説明する ネットワークの構成は以下の通りです。

    +---------+       +----------+       +----------+
    |         |       |          |       |          |
    | linux   |       |  Win95   |       |  MacOS   |
    | ann     |       |  betty   |       |  clara   |
    |         |       |          |       |          |
    |         |       |          |       |          |
    +---------+       +----------+       +----------+
           |                |                      |    +-----+
           |                |                      +----|     |
           |                +---------------------------|ハブ |
           +--------------------------------------------|     |
                                                        +-----+

ご覧のように、3台のコンピュータがあり、それぞれの上で、Linux, Windows95, MacOS が走っています。ann, betty, clara というのは、各々のコンピュータの名前です。

それぞれのコンピュータは Ethernet ケーブルを通してハブという装置につながって

います。コンピュータ3台というのは、ネットワークらしいネットワークの最小構成

です。2台しかつながないと、たとえれっきとした LAN でもなんかこう物足りな いですよね。

コンピュータをネットワークに接続する場合、いろいろなことができます。また、 家庭内 LAN であれば、結構いいかげんなことをしてもとりあえずは問題なく動き ます。しかし、いいかげんな経験を積んで同じ様なことを会社でやると、周囲の人 に大変な迷惑を与えます。とりあえずはこの文書を読んでおけば、会社で接続する ことになっても「人に迷惑をかけない」ですむように説明します。基本は「管理者 に従え」だけなんですが。また、そういう事抜きにしても、自分の家にある系が 国際規約にばっちりのっとっているというのは、かっこいいと思いませんか?

5.2 10BASE-T Ethernet

Ethernet は、いわゆる LAN と呼ばれるものの一つです。ネットワークの話をする ときに、Ethernet と TCP/IP が両者ともLAN として紹介されるため、多少の混乱 をきたす人がいますが、両者を LAN と呼ぶことは特に間違いではありません。 Ethernet は、LAN を使用するときに基本となるハードウェアよりの部分を提供し ます。

Ethernet のことを物理的な結線のことだと考えてもあながち誤りではありません。

その物理的な結線を利用してネットワークを構築するのが TCP/IP です。 Ethernet と TCP/IP はこのように別ものですから、Ethernet の上で働くのはTCP/IP

に限りません。NetBEUI (Microsoft), IPX (Novell), AppleTalk (Apple) など のネットワークが、Ethernet の上で動きます。また、TCP/IP も Ethernet の上だ けで働くわけではなく、PPP を使用してシリアル回線経由でネットワークと接続す ることいった事もできます。

Ethernetの種類について説明しましょう。Ethernet は、さまざまな機能強化と標準

化を経て、現在の Ethernet になっています。現在主流なのは、10 BASE-T, 10 BASE-5, 10 BASE-2 と呼ばれる3種類です。データのやり取りの立場から見ると三者

とも同じ 物でして、それ程高価ではないハードウェアを使用して相互に接続可能です。違う のは、どのような線を使用して配線するかという点です。三つのうちどれを使用す るかという話ですが、低価格や配線の容易さから、家庭用としては10 BASE-T をお 勧めします。他の構成でもいいのですが、この文書では、10 BASE-T のみを説明し ます。

10 BASE-T の"10"とは10Mbit/sという Ethernet の伝送速度をあらわします。これは

モデムの28.8kbit/s の300倍くらいの速度です。実際のファイルなどを送る速度 が300倍になることはありませんが、何十倍かにはなりますので、ずいぶん気楽にデ ータ を遅れます。次にBASEですが、これは "BASE BAND" という言葉からきているとだけ 知 っていれば十分です。最後の "T" は、Twisted Pair Cable (以下、対より線。ツイ スト ペアケーブルとも呼ばれています)という、10 BASE-T が使用する配線材の名前からきています。対より線とは、ケーブルを 2本ずつの対にして撚り、その対を束ね合わせて作ったケーブルです。このよう なケーブルは細くて柔らかく、その上雑音に強くなります。また、安価に量産できま す。

10 BASE-T を利用したEthernetでは、それぞれのコンピュータと、ハブと呼ばれる装

置をケーブルで接続します。そのため、ハブからはコンピュータの数だけのケーブル

が出てきます。もうちょっとハブに接続する線が増える様な構成方法もありますが、

それはここでは触れません。

それでは、10 BASE-T で使用する器材をもう少し詳しく見ていきましょう。

5.3 ケーブル

すでにお話したように、この文書で説明する 10 BASE-T では、対より線を使用し ます。対より線 は安価で、コンピュータやハブへの接続も簡単です。接続にはモデムでおなじみの モジュラージャックを使用します。

電話機のモジュラージャックは6芯ですが、10 BASE-T では8芯を使用します。6芯 と8芯は物理的な大きさが全くちがいます。したがってさし間違いが起きることは ありませんし、間違って買ってきたら使えません。モジュラージャックとケーブル の加工は、専用の工具を使用します。工具そのものは1, 2万円しますので、でき合 いのケーブルを買うことをお勧めします。最近はいろいろな場所で事務用品(?) としてケーブルを売っています。くれぐれも電話用と間違えないでください。

実は10 BASE-T のケーブルには2種類あります。ストレートとクロス です。ここで説明するネットワーク構成ではストレートケーブルしか使用しません。

ストレートケーブルの場合、店では特別な表示をしていない場合がありますが、 「クロスケーブル」とか「ハブとハブの接続用」と書いていないならば大丈夫です。

自信がなければ、店の方に「コンピュータとハブを10 BASE-Tで接続する」と言え ばわかります。

5.4 ハブ

ハブとは、自転車のスポークを軸に繋ぎ止める部品です。転じて、何かを一点に 集積する場合、その点をハブと呼びます。Ethernet のハブは 10 BASE-T でだけ、 使われます。10 BASE-T のケーブルは両端にしかプラグをつけられませんので、 複数のコンピュータからネットワークを使用するため、ハブ でこれらを一点に 集めて、データ交換を行うのです。別段面倒な設定などなく、利用者はケーブル を差し込んでハブに電源を供給するだけです。

ハブ は近年大変低価格化が進みました。1万円も出すとちゃんとしたハブを買えます 。 家庭用を意識してか手のひらサイズのハブが増えました。 家庭内 LAN では手のひらハブで十分です。

ハブは複数の 10 BASE-T ポートをもっています。家庭用ならば 4,5 ポートもあ れば十分です。将来自分がたくさんコンピュータを買うかもしれないと思っても 、特に 8 ポートハブなんかを買うことはないでしょう(そのころには、「ハブ間 接続」というのを自分でやれるようになっているでしょうから、心配はありません) 。 使わないポートは放っておいて構いませんが、心配ならば穴をふさぐといいでしょう 。

ハブには 10 BASE-2 のポートがついているものもあります。家庭用なら 10 BASE-2

のポートはいりません。残念ながらこのポートがないからといって、あまり安く はなりません。ハブ に 10 BASE-2 のポートがある場合、使用しないならば単にそ のポートをつながないで放っておいてください。これも心配なら覆いでもかぶせて おいてください。覆いはプラスチックのものがハブについているかもしれません。 なければ秋葉原あたりで金属製の蓋を探すことになります。

「デイジーチェーン」ポートを持つハブもあります。ここで説明する 構成には、デイジーチェーンポートは不要です。このポートは、ハブ とハブ を接続する時に使用します。ハブ とハブの接続は、ネットワークの規模を拡大 するときに行いますが、詳しいことはここでは説明しません。デイジーチェーン ポートを使うと、その隣のポートは使えなくなることもあります。これはハブの 種類によりますので、説明書を良く読んでおいてください。このポートがなくて もハブ間接続はできますので心配することはありません。

ハブ には、Ethernet の 状態を表わす LED がついているものがあります。必須か というと、そうでもありません。が、確かに「あれ、動きが変だぞ」というときに は便利です。LED がなくても大して安くなりませんから、最初の 1 台くらいは 動作確認をしやすいよう LED 付きを買いましょう。

どのくらいの値段のハブを買うかは悩ましい問題です。大ざっぱな話しとして、家 庭用なら1万円程度で十分だと思います。私は、Planet の EH-500 というハブを使 っています。1万円程度のハブですが、家庭でも会社でも特に問題なく使っています 。

ハブ の電源はコンピュータの電源に比べると粗末に扱われがちです。電源はしっか

りとコンセントにさし、誤って抜けるようなことが無いようにしてください。LAN の

障害は複数のコンピュータが同時に被害を受けるので、コンピュータ単体の故障より

も深刻です

5.5 NIC

NIC は、Network Interface Card の略です。初期のAT互換機は、ネットワーク機能

内蔵などというものは皆無でしたので、ネットワークといえばカードと相場が決まっ て いましたし、今でもそうです。

NIC にも 10 BASE-T/2/5 などに対応したものがありますが、すでに説明しています

ように家庭内 LAN では10 BASE-T に対応したもので十分です。この点で迷う必要は

ありません。

それでは、それぞれのコンピュータの NIC を説明しましょう。

LinuxとNIC

Linux は非常に多くの NIC に対応しています。恐らく現状ではコンピュータ屋さん

のNIC コーナーで目をつぶってつかんだ物を買ってきても、Linux は対応できるでし

ょう。しかし、それはあくまで「数々の調査と設定の後」という条件がつきます。

ある程度のベテランや「設定も楽しみのうち」などという(私のような?)変人には 数々の設定もそれほど問題ではありません。しかし最初はあまり問題に巻き込まれた

くないというなら、やはりしっかりしたものをお勧めします。初心者のうちはいいも

のを使えといいますし。

私のおすすめは 3COM の 3C509B シリーズです。3COM は NIC に関して長い経験をも っ ています。また 3C509B は市場にでて時間が経っており、店頭に平積みされるほど 流通量が大きいため、製品としても枯れています。 このシリーズは ISA版で、ものによっては 10 BASE-T 以外の Ethernet にも対応し

てます。

現在では PCI 機で Linux を使っている人も多いかもしれません。 3COM は PCI 版の NIC も販売しており、PCI を使いたい人は、PCI 版で ある 3C590 を買う方がいいでしょう。 PCI カードを使用する利点は、もっぱら設定の容易さにあります。 PCI バスは割り込みや IO ポーとアドレスの割り付けといった問題をすべて 起動時に解決してしまいます。ですから、ISA のように PnP 対応云々を 考える必要はありません。だまってカードを挿すだけです。 逆に PCI 版を買う デメリットがあるかというと、やはり価格でしょう。3C590 は 3C509 に比べると 5 割程度は高いようです。この文書で取り上げる LAN では、 PCI バスを使用しても速度的にはほとんど見るものはないのではないかと思います 。

この文書の最初の版では、3C905 もお勧めしていました。このカードの ドライバは存在しますが、少なくとも Slackware には入っていません。 したがって、手作業でのドライバ導入をいとわない方には、いまのところ お勧めできません。勇み足で行き過ぎた推奨を行ったことをお詫びします。

自分で文書を読み漁る気持ちが旺盛で、問題を克服することに怖じ 気づかないならば、もっと安い NE2000 互換カードを買うのも手です。 今では NE2000 互換カードならば、3000 円強程度で手に入るようです。互換機 を自分で組み立てるのになれた人なら、このくらいの出費は失敗しても 勉強のうちとして納得できるかもしれません。NE2000 互換カードの中には いろいろな問題を持ったものもありますが、たいていは克服可能なようですし、 これらの問題はほとんどが設定に関するものですから、一度解決すれば、 運用自身には支障はありません。 Ethernet-HOWTO を読んでみてください。各種の問題と対策があげてあります。

なお、私は 3C509B にしなさいとか 3C509B なら絶対安心などとはいっていませんか

らあしからず。偶然、私が 3C509B を良く知っていて、気に入っているだけです。

私は 3C509B が特定の状況下で問題を起こすことも知っています。問題に直面した かって?いえ、Ethernet-HOWTO を読んだのです。ここには NIC を買う前に知って いるべき事がほとんど全部書いてあります。 自分が買おうとしているカードが問題を 起こしそうかどうかあらかじめ調べておくといいでしょう。

Ethernet-HOWTO には、翻訳があります。入手方法などは文書の終わりで紹介します 。

Windows95とNIC

Windows95もうんざりするほどの NIC に対応しています。と言うか、この文書 の発表直前である 97 年 1 月の時点で「AT 互換機用だけど Windows95 では使えません」という NIC を販売している会社があったら、その反骨精神に拍手 したい ところです。もちろん、売れ残りは別ですよ。皆さん売れ残りには注意してください 。 Linuxと違ってこっちの方 はメーカー純正ドライバがあったりするので、やや気楽に買えるでしょう。これに 関しては Windows95 対応のシールがあれば大丈夫だろうといえます。少なくとも Microsoft はそう思っているようです(思いたがっている?)。 しかし、冒険を望まないなら 3C509B ISA版が 良いと思います。お約束ですが保証はできません。あしからず。3C509B のドライバ ー は始めから Windows 95 についてきますので新規にドライバーを導入する 必要はありません。

MacOSとNIC

MacOS機の場合、現在では LocalTalk と呼ばれるネットワークインターフェースが はじめから搭載されています。しかし、最近では Ethernet インターフェースも 内蔵した機種が増えました。後から NIC を増設する場合でも Mac はほとんど ハードウェアのための設定をする必要がないため、作業は楽なはずです。 ただ、Performa の Ethernet Card で苦労したという話を聞きました。機種に よるかもしれません。

NICとは少し話が違いますが、Macはかなり最近までバックパネルに固有の Ethernet イン ターフェースをだしている機械が多くありました。外つけアダプタ( AAUI という 名前です)で数種類の Ethernet に対応するためでした。しかしながら、そういったMacの場合は外つけのアダプ ターを買わないと 10 BASE-T と接続できません。最近のMacは10 BASE-T のため のポートをはじめから持っているものもあります。古い機種の場合、自分のネッ トワークアダプターに何が必要かよく調べてからショップで行くとよいでしょう。 この場合、店にあなたの Mac の説明書を持っていくと間違いがないと思います。 ただし、あらかじめ自分で説明書を読んでおいて、話をできるようにしておくこと。

私のMacに関していえば、Quadra650は最初から Ethernet インターフェース を内蔵していました。外部に10 BASE-T 用のアダプタをつけて使用しています。

なお、Ethernet カードを買うなら 10 BASE-T 対応のものにしてください。


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